解題/抄録
- 書誌の解題/抄録
- 青本合1冊、鳥居清満画、柱題「りうぐ(く)う界」「りう宮かい」。「秀郷龍宮巡」が本来の題か疑問あり。あるいは「花軍龍宮界」か。慶応義塾の同題作品は当館本とは別本で、この内容の作品は当館以外に所蔵が知られない。
(内容)龍宮界のお家騒動、浦島太郎と接合。
(上)浦島太郎が日本へ帰った後、龍宮の政事は弛み、鰐鮫太郎が鯰三郎と心を合わせ、竜王を殺して自分が王になろうと謀り、法螺貝四郎を遣わして三上山の百足に竜王に危害を加えるよう頼む。法螺貝四郎は帆立貝に乗って三上山に至り、鰐鮫八郎の口上を述べて頼む。百足は快諾する。竜王は百足が毎夜御殿の上で叫ぶ声に悩み、大勢を召して評議する。亀八が進み出て、近江の勢多へ行き日本人を頼もうと提案、執権桜鯛之丞が同意して促し、乙姫は浦島様の便りを聞いて給われと頼む。その夜、鯛之丞は雲気台で天文を観、魚鱗仲間の謀叛を察知する。藤太秀郷が勢多の橋に来ると、亀が涙を流し、主君が百足に悩まされるので退治して欲しいと頼む。秀郷は不憫に思い承知する。亀は喜び秀郷を背に乗せ龍宮へ案内する。凄まじい百足が御殿を巻き、秀郷は矢を射掛けるが一の矢も二の矢もはね返され、八幡を祈誓して唾を吐き掛けた三の矢に、さしもの百足も死し、秀郷の武功は天下に知られ賞嘆される。
(下)鰐鮫は百足が滅びたと聞き、龍宮へ攻め寄せ扉を敲いて鬨の声を上げ、数多の黒魚が喚き叫んで攻める。鰐鮫は馬上で軍配を掲げて下知し、赤鱏七郎、鯰三郎、法螺貝四郎が白鱚、鮑、兜貝、飛魚を攻める。鮹と法螺貝、鯰と鯛、赤鱏と亀の一騎討ち。入り乱れ勝負が付かぬ所へ、秀郷は大童(大わらわ)になって来、鰐鮫の口に手を掛け真二つに引き裂く。鯰は生捕られ追い払われる。法螺貝帆立貝ほか皆々降参する。竜王は大いに喜び「百足を退治、鰐の口を逃れ、再び龍宮が治まるのは秀郷の武功ゆえ」と、別殿に館を設え日々馳走する。秀郷は30日を龍宮で過ごし暇を乞う。竜王は日本への土産に俵や鐘など宝を飾り披露する。これにより俵藤太と称するそうだ。秀郷は日本へ帰り、丹後国を尋ね浦嶋に会い龍宮の有様を残らず物語り、乙姫からの伝言を伝える。浦島は「お前は龍宮へ行かれたか。私はもう玉手箱を開いたのでこのように翁となり果てた。これではもう龍宮へは参られますまい」と言う。(木村八重子)(2016.9)
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