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鬼女物語 3巻

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解題/抄録

書誌の解題/抄録
黒本3冊(合1冊)、題簽欠。狩野文庫本に全揃。題簽「風流/大森彦七(おゝもりひこしち)/二葉(ふたば)の前(まへ)/鬼女物語(きじよものがたり) 上(中)」「風流/大もり彦七(ひこしち)/二(ふた)ばの前(まへ)/鬼女物語(きぢよものがたり) 下」。中冊は『青本絵外題集1』(貴重本刊行会、1974.7)、113頁にもあり。富川房信画、柱題「鬼女物語上(中・下)」、題簽により子年の鶴屋版。他に題簽と下冊を欠く慶応義塾図書館本がある。
(内容)『太平記』巻第12~23により大森彦七を主題とする書替えもの。
(上)足利尊氏は大塔の宮を牢へ押し籠めさせ、謀叛が顕れたので家来の藤部に殺害させる。宮は藤部が切りかける太刀の切先を3寸ほど食い切って怒る。楠正成は討死を覚悟し、桜井宿にて子正行に帝へ忠勤を励めと諭し、湊川で奮戦の後寺に入り帝より賜った太刀で切腹。この太刀を正行に渡すよう、娘二葉の前の許婚大森彦七盛長に託す。阿波入道は楠を追い掛け首を取る。坊門清忠は帝位を望んで謀叛を企て、紀州日前宮の神鏡を内侍所(八咫鏡)の代わりに、楠の太刀を宝剣にしようとする。藤部は熊野辺に忍ぶ大塔の宮の隠し子雛の宮を討とうという。
(中)大森彦七は楠の遺志を果たすため阿波入道の聟となる。入道は楠を討って褒美に賜ったその太刀を聟引出とする。坊門がこれを奪おうとし、尊氏は渡すなと制止する。雛の宮を追う藤部の馬を、母の勘当を受けた正行が乗取る。恩地左近がそれを手柄に正行の勘当を詫びるが、母は「その馬は金剋木(きんこくもく。陰陽道五行相剋の説で、金は木に剋[か]つという意味)で千早城を乗取る」と許さない。尊氏の賜物「正成の采配」を使者の大森が持って来る。正行が割ると「尊氏」とあり「楠を味方にとは愚か」と言う。大森はなじるが、母は「それでこそ知仁勇」と勘当を許す。二葉の前は大森が阿波入道の聟になったのを悲嘆し、大森は心底を語る。母は正成の太刀を受け取らぬ内は二葉と縁は切れぬという。和泉国の孫介と一子嘉藤治が雛の宮を匿い、討取ろうとする藤部を防戦する。雛の宮は女装し父の敵藤部を討ち取る。嘉藤治は町人となった本間孫四郎に雛の宮を頼み最期。本間は雛の宮を負い海辺を逃れ行く。
(下)本間は雛の宮を辻堂に隠し、五一兵衛へ養女にやった実娘に会い、宮の身替わりにと商売道具の飴の箱へ入れて連れ帰る。五一兵衛は養女を尋ねて本間方へ来、大塔宮の忠臣平賀権太郎とし綱と名乗り、協力して雛の宮を御代に出そうと言う。本間は娘の首を討ち身替わりにする。風雨の夜、二葉の前は別離の印の太刀を受け取りに来る。(第13・14丁は、題名の由来となる重要な場面だが、特に第14丁表は版木の質が脆かったか、狩野文庫本も同様に極度に摩滅して殆ど読めない。該当箇所は推定も混ぜる)二葉の前は鬼女の面を被る。末世に鬼女に会ったように『太平記』に見えるが、それは大森の情で、大森は二葉の前に太刀を渡し楠の亡魂に報いたのである。「嗚呼忠臣楠正成碑」の前に三方に乗せた菊水の旗・熨斗・銚子を供え、采配を振る母、敷物に座す鎧姿の正行、兜を持って後ろに控える鎧武者、恩地左近、和田新兵衛、二葉の前。山の端の向こうに、馬上の雛の宮と平賀、本間が行く。坊門は謀叛顕れ、楠足利に攻め立てられ生け捕られる。光明帝は御高齢で王子なく雛の宮に御位を譲る。楠足利和睦しめでたき御代となる。(木村八重子)(2016.9)

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