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高野薙髪刀 2巻

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解題/抄録

書誌の解題/抄録
中本型読本(〈中本もの〉)。小枝繁著・蘭斎北嵩画。文化5年(1808)刊。2巻2冊。
主人公男女が「粂介(くめのすけ)」・「梅児(おうめ)」であること、作中高野山が重要な舞台となることは、自序に言うように浄瑠璃『角額嫉蛇柳(つのびたいうらみのじゃやなぎ)』(近松門左衛門『心中万年草』の改作)に基づくもの。しかし本作では、妖剣の祟りにまつわる仇討ち話に改変されている。
もと赤松家の武士である刀鍛冶「虚六平(きょろくへい)」が殺したカマキリとセミの魂魄が、折から鍛えていた短剣に宿り、高野聖「仁海(じんかい)」の手放すようにとの勧告を拒否したまま虚六平は衰弱死、妻「小藤(こふじ)」は飢えた老母を救うために、短剣を添えて二歳の男子を捨てに行くが、老母は短剣を奪いにきた悪者「強八(ごうはち)」に殺害されてしまう。小藤は出家、男子は仁海に拾われ、「粂介」と名づけて高野山の麓に住む剃刀屋「孫次六(まごじろく)」夫婦に預けられる。その娘が「梅児」(巻之上)。
巻之下前半では、逃亡した強八が、殺害した情婦「雪路(ゆきじ)」の怨恨により蛇に腹を巻かれ(「蛇(くちなわ)道心」説話に依拠 堤邦彦、1996.7など)、仁海に救われて高野山で「道珍」と名のる。同後半で、なおも悪心已まない道珍は、孫次六の下僕と組んで粂介・梅児を陥れようとするが、再び蛇に巻かれる。一方女人堂で母小藤と再会した粂介は、祟りの消滅した短剣で道珍(強八)を討ち、仁海の諭しにより還俗、梅児を妻とし赤松家に仕える。
終結部分に、短剣の因果がそれまでの展開と絡めて説明され、馬琴読本などに顕著な〈読本的枠組〉(大高洋司、2010.5など)の役割を果たしていることが分かる。髙木元による翻刻・解題が『叢書江戸文庫25 中本型読本集』(国書刊行会、1988.1)に収まる。(大高洋司)(2017.2)
(参考文献)堤邦彦『近世仏教説話の研究 唱導と文芸』(翰林書房、1996.7)
大高洋司『京伝と馬琴 〈稗史もの〉読本様式の形成』(翰林書房、2010.5)

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