スライド1 著作権法と障害者サービス 梅田 ひろみ スライド2 著作権法と障害者サービス 1.視覚障害者等のための複製等に係る条文について 2.図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドラインのポイント 3.聴覚障害者等のための複製等に係る条文について 4.今後の改正の予定について *日本図書館協会発行図書館実践シリーズ「障害者サービスと著作権法」特に第2章、第3章をお読みください。 *今後の法改正に関しては、「文化審議会著作権分科会報告書」平成29年(http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/h2904_shingi_hokokusho.pdf)の第3章をお読みください。 スライド3 著作権の種類 複製権 著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利 21条 37条 上演権・演奏権 著作物を公に上演したり、演奏したりする権利 22条 38条1項 上映権 著作物を公に上映する権利 22条の2 公衆送信権・公の伝達権 著作物を自動公衆送信したり、放送したり、有線放送したり、また、それらの公衆送信された著作物を受信装置を使って公に伝達する権利 23条の1項 37条2項 *自動公衆送信とは、サーバーなどに蓄積された情報を公衆からのアクセスにより自動的に送信することをいい、また、そのサーバーに蓄積された段階を送信可能化という。 23条2項 37条3項 口述権 言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利 24条 展示権 美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利 25条 頒布権 映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利 26条 譲渡権 映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利 26条の2 47条の9 貸与権 映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利 26条の3 38条4項 翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利) 27条 43条 スライド4 著作権法と障害者サービス(視覚障害者等のための複製等) 第三十七条  公表された著作物は、点字により複製することができる。 2  公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。 3  視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(以下この項及び第百二条第四項において「視覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものは、公表された著作物であつて、視覚によりその表現が認識される方式(視覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この項及び同条第四項において「視覚著作物」という。)について、専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、当該視覚著作物に係る文字を音声にすることその他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 スライド5 著作権法第37条の規定で認められた複製 点字による複製 第37条第1項第2項 複製の主体(誰が) 規定なし∴誰でも可 複製の対象物(何を) 公表された著作物(その他の規定はない∴図書館資料でなくてもよい) 複製の方式 点字にすること、パソコン点訳でデータ化すること 複製物の使用目的 第2項の公衆送信可能(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む)以外の規定なし∴誰が使ってもよい。非営利無償の貸出(第38条第4項)、譲渡(第47条の10)も可 視覚障害者等のための複製等 第37条第3項 複製の主体(誰が) 視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者(視覚障害者等)の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるもの(著作権法施行令第二条 ) *2009年改正前は、「等」はない。 複製の対象物(何を) 公表された「視覚著作物」 *2009年改正前は、公表された著作物 (その他の規定はない∴図書館資料でなくてもよい) 複製の方式 必要と認められる限度において、文字の音声化、その他当該視覚障害者等が利用するために必要な方式により複製すること 複製物の使用目的 専ら視覚障害者等で当該方式によつては当該視覚著作物を利用することが困難な者の用に供するため、および自動公衆送信(送信可能化を含む) 以外の規定なし∴非営利無償の貸出(第38条第4項)、譲渡(第47条の10)も可 スライド6 第37条第1項第2項 ただし書(権利制限の除外対象)なし 視覚障害者等のための複製等 第37条第3項 ただし書(権利制限の除外対象) 著作権者から許諾を得て,すでに同じ形式(DAISY 録音図書や拡大図書,大活字本,デジタルデータなど)で、販売・無償頒布、インターネットを通じて流すなどしている場合は、第37条第3項の権利制限除外 ⇒新たな複製、公衆送信ができないということ。すでに複製した物の貸出  は可 経過措置 附則 (平成二一年六月一九日法律第五三号) (視覚障害者のための録音物の使用についての経過措置) 第二条 この法律の施行前にこの法律による改正前の著作権法(以下「旧法」という。)第三十七条第三項(旧法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けて作成された録音物(この法律による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第三十七条第三項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる著作物、実演、レコード、放送又は有線放送に係るものを除く。)の使用については、新法第三十七条第三項及び第四十七条の九(これらの規定を新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。 ⇒平成21年12月までに点字図書館で公衆送信していたものは、DAISY出版  されていても公衆送信し続けられる。 スライド7 第37条第1項第2項 翻訳、翻案等による利用 翻訳のみ(第43条の2) 利用の条件 出所の明示(第48条の1) 利用の態様に応じて、合理的と認められる方法及び程度により、著作物の題名、著作者名、出版社名などを明示しなければならない 複製物の目的外使用 視覚障害者等のための複製等 第37条第3項 翻訳、翻案等による利用 翻訳、変形又は翻案(第43条の4) 利用の条件 出所の明示(第48条の2) 利用の態様に応じて、合理的と認められる方法及び程度により、著作物の題名、著作者名、出版社名などを明示しなければならない 複製物の目的外使用 第37条第3項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によって当該著作物を公衆に提示した者(第49条の1及び第2項の1) スライド8 図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドラインのポイント (資料を利用できる者) 4 著作権法第37条第3項により複製された資料(以下「視覚障害者等用資料」という。)を利用できる「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」とは,別表1に例示する状態にあって,視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な者をいう。  (別表1) 視覚障害 聴覚障害 肢体障害 精神障害 知的障害 内部障害 発達障害 学習障害 いわゆる「寝たきり」の状態 一過性の障害 入院患者 その他図書館が認めた障害 5 前項に該当する者が,図書館において視覚障害者等用資料を利用しようとする場合は,一般の利用者登録とは別の登録を行う。その際,図書館は別表2「利用登録確認項目リスト」を用いて,前項に該当することについて確認する。当該図書館に登録を行っていない者に対しては,図書館は視覚障害者等用資料を利用に供さない。 スライド9 図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドラインのポイント (図書館が行う複製(等)の種類) 6 著作権法第37条第3項にいう「当該視覚障害者等が利用するために必要な方式」とは,次に掲げる方式等,視覚障害者等が利用しようとする当該視覚著作物にアクセスすることを保障する方式をいう。  録音,拡大文字,テキストデータ,マルチメディアデイジー,布の絵本,触図・触地図,ピクトグラム,リライト(録音に伴うもの,拡大に伴うもの),各種コード化(SPコードなど),映像資料のサウンドを映像の音声解説とともに録音すること等 (市販される資料との関係) 9 著作権法第37条第3項ただし書に関して,図書館は次のように取り扱う。 (1)市販されるもので,次のa)〜d)に示すものは,著作権法第37条第3項ただし書に該当しないものとする。    a)当該視覚著作物の一部分を提供するもの    b)録音資料において,朗読する者が演劇のように読んだり,個々の独特の表現     方法で読んでいるもの    c)利用者の要求がデイジー形式の場合,それ以外の方式によるもの d)インターネットのみでの販売などで,視覚障害者等が入手しにくい状態にある  もの(ただし,当面の間に限る。また,図書館が入手し障害者等に提供できるものはこの限りでない。) スライド10 図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく著作物の複製等に関するガイドラインのポイント (2)図書館は,第6項に示す複製(等)を行おうとする方式と同様の方式による市販資料の存在を確認するため,別表3を参照する。当該方式によるオンデマンド出版もこれに含む。なお,個々の情報については,以下に例示するように具体的にどのような配慮がなされているかが示されていることを要件とする。  また,販売予定(販売日を示したもの)も同様に扱う。 (資料種別と具体的配慮内容)  例:音声デイジー,マルチメディアデイジー(収録データ形式),大活字図書(字体と    ポイント数),テキストデータ,触ってわかる絵本,リライト (3)前記(2)の販売予定の場合,販売予告提示からその販売予定日が1か月以内までのものを「提供または提示された資料」として扱う。ただし,予定販売日を1か月超えても販売されていない場合は,図書館は第6項に示す複製(等)を開始することができる。  (4)図書館が視覚障害者等用資料の複製(等)を開始した後に販売情報が出された場合であっても,図書館は引き続き当該複製(等)を継続し,かつ複製物の提供を行うことができる。ただし,自動公衆送信は中止する。 スライド11 (聴覚障害者等のための複製等) 第三十七条の2  聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 一 当該聴覚著作物に係る音声について、これを文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。 二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。)。 スライド12 著作権法第37条の2の規定で認められた複製等 複製の主体(誰が) 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(聴覚障害者等)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるもの(著作権法施行令第二条の2 ) 一は、聴覚障害者情報提供施設および文化庁長官が指定する者 二は、上記及び図書館等 複製の対象物 公表された聴覚著作物(図書館資料でなくてもよい) 利用の方法 必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用 一 当該聴覚著作物に係る音声を文字にすること、その他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと 二 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するため、複製すること(当該聴覚著作物に係る音声を文字にすることその他当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による当該音声の複製と併せて行うものに限る。) スライド13 複製物の使用目的 専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うこと。二の場合は非営利無償の貸出で補償金を払う(第38条第5項)、一については譲渡(第47条の10)も可 ただし書(権利制限の除外対象) 著作権者から許諾を得て,当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、権利制限除外 翻訳、翻案等による利用 翻訳又は翻案(第43条の5) 利用の条件 出所の明示(第48条の2) 利用の態様に応じて、合理的と認められる方法及び程度により、著作物の題名、著作者名、出版社名などを明示しなければならない 複製物の目的外使用 第37条の2本文に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によって当該著作物を公衆に提示した者(第49条の1及び第2項の1)