解題/抄録
- 南総里見八犬伝 9輯98巻の解題/抄録
- 読本。曲亭馬琴著、柳川重信・渓斎英泉ほか画。文化11年(1814)11月-天保13年(1842)3月刊。9輯106冊。
室町時代、安房里見家の勃興と、これを支える八犬士の活躍を描いた長編史伝もの読本の代表作。出版に28年を要し、その間、山崎平八(山青堂)・美濃屋甚三郎(涌泉堂)・丁子屋平兵衛(文渓堂、以下丁平)と、版元が3度交替した。これに伴う混乱や第9輯に入ってからの内容肥大化、度重なる後印(修)本の刷り出しなどのため、輯(編)の区分や冊数をはじめ、本作の書誌はきわめて複雑である(板坂則子1978.6-1979.9、朝倉留美子1992.9-1993.9)。幸い馬琴自身の校訂した一本が当館に所蔵され(初印・揃い、当館請求記号:本別3-2)、これに基づく翻刻テキストも刊行されて(浜田啓介校訂、新潮日本古典集成別巻1-12、2003.5-2004.4)、諸本を見分ける指針となっている。
掲出本は、3番目の版元である丁平が版権を得て第8輯を出版する際、あわせて第4・5輯の巻冊数を変更し、第1-7輯の表紙・見返し・口絵・挿絵などに修訂を加えた後印の一本で、朝倉は、他本と詳細に比較検討した結果、取り合わせ本とする(1993.9)。また、掲出本第11・14・15・16・18・19編(第9輯中套以下を第10-19編とする浜田[2004.4]の区分に従う。)の奥付に記された丁平の住所は、他編の「江戸小伝馬町三丁目」と異なっている(初印本ではすべて同じ)。天保13年(1842)の出版取締に伴う所払いの結果(板坂1979.9、朝倉1993.9)であるが、それでも読本らしい美麗さが損なわれていないのは、丁平の矜持によるものであろう。(大高洋司)(2019.2)
(参考文献)板坂則子「『南総里見八犬伝』の諸板本(上)(下)」、「近世文藝」29・31、1978.6-1979.9
板坂則子『曲亭馬琴の世界』第2章9A「『南総里見八犬伝』の初板本」、笠間書院、2010.2
朝倉留美子「『南総里見八犬伝』諸本考(前編)(後編)」、「読本研究」第6輯下套・第7輯下套、1992.9-1993.9
浜田啓介「解説『八犬伝』の出版」、『新潮日本古典集成別巻 12』、新潮社、2004.4
目次・巻号
南総里見八犬伝 9輯98巻の書誌情報
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https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2551601/1