解題/抄録
- 江戸名所図会 7巻の解題/抄録
- 地誌。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)著、長谷川雪旦画。初帙3巻天保5年(1834)刊、後帙4巻天保7年(1836)刊。20冊。
江戸とその近郊を扱う挿絵入り地誌として、それまでの類書を集大成したもの。神田の草創(くさわけ)名主斎藤家3代による労作である。完成・出版を果たしたのは幸成(月岑)であるが、祖父・父の著作であることが前提となっており、地名などは、30年以上さかのぼった寛政頃(出版申請は寛政10年[1798] 『類集撰要』[当館請求記号:804-4]第46冊「書物」)の表記に従っている。また、公儀をはばかり直接江戸城を描かない(市古、1990.8)。刊行直後の初帙に目を通した曲亭馬琴は「その妙は(長谷川雪旦の)画に在り」とし、観察力は北斎以上と賞賛している(「異聞雑稿」、天保5年2月24日記)。
掲出本の刊記は、初帙・後帙とも初印本と同じく須原屋茂兵衛・同伊八の連名だが、初印・後印を判別するための基準8項目(『江戸名所図会事典』[『新訂 江戸名所図会』別巻2]所収「『江戸名所図会』を読むために 一」 市古夏生執筆、1997.6)と照合するに、5項目で後印の特徴を備える。蔵書印「冑山文庫」から、国学者根岸武香(ねぎしたけか [1839-1902])の旧蔵本と分かる。
なお本書の翻刻は、市古夏生・鈴木健一校訂『新訂 江戸名所図会』6冊・別巻2冊(ちくま学芸文庫、1996.9-1997.6)が現在最も使いやすいテキストである。(大高洋司)(2019.2)
(参考文献)髙木元「『類集撰要』巻之四十六―江戸出板史料の紹介―」、「読本研究」第2輯下套、1988.6
市古夏生「〈江戸城〉 斎藤月岑他『江戸名所図会』」、「國文學」35-9、1990.8
大高洋司「資料解説 江戸名所図会」、人間文化研究機構連携展示「都市を描く-京都と江戸-」図録、2012.3
『国書人名辞典』第3巻、「根岸武香」の項、岩波書店、1996.11
目次・巻号
江戸名所図会 7巻の書誌情報
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https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2563397/1